『ジャッコ・グリーンの伝説』 

(ジェラルディン・マコーリアン作 偕成社 2004.10)

『ジャッコ・グリーンの伝説』表紙

用語解説集

妖怪・モンスター・伝説

戦争・武器

祭り

その他

【妖精・モンスター・伝説】

p.10
ドモボーイ Domovoy
 ロシア民話の、家に棲みつく精霊。老人のような姿をしており、その家の家族の健康や幸福を守り、家畜の世話をする。しかし、気に入らない家畜はいびり殺したりもする。

グラッシャン glashan
 マン島のホブゴブリン(人間に危害を与える精霊・小鬼の「ゴブリン」とは区別され、一般的には人間に対して好意的な精霊)。気立てがよく、喜んで人間の手助けをするが、悪ふざけが好き。機嫌を損ねると危険。

ジャッコ・グリーン Jack o’ Green
 グリーン・マン、ジャック・イン・ザ・グリーンとも呼ばれる。森を守る精霊。葉におおわれた顔のモチーフはよく教会のステンドグラスなどに用いられ、イギリスではおなじみ。

p.12
ブラック・ドッグ Black Dog
 妖精犬の一種。黒妖犬ともいう。子牛ほども大きく、毛むくじゃらで、燃えるような目をしている。

バーゲスト Barguest
 邪悪な妖精の一種。角と牙と鉤つめと火のような目を持ち、黒妖犬のような姿をしている。ドイツ語で “bear ghost” を意味する “Bar Geist” から派生した名前。

ティッコ Tchi-co
 チャネル諸島の死の黒い犬。ティッコが通りにうろつくと、悪い知らせの前ぶれといわれている。

p.13
マーザ・ドゥー Moddey Dhoo
 マン島の黒妖犬。その姿を見た者はじきに死ぬといわれている。

ブラック・シャック Black Shuck
 ノーフォーク州の黒妖犬。「シャック」は、アングロサクソン語で「悪魔」を意味する “scucca” からきている。

パッド・フット Padfoot
 有害な妖精の一種。しばしば黒犬の姿で現れる。道を歩く人の後ろを、足をするような音を立てて追いかけてくることからこの名がついている。

p.20
ワーム worm
 ドラゴンの一種で、通常、翼と足がないものをさす。なかでも、スツア・ワームは非常に大型のワームを指す。スツア(stoor)は「強大な」の意味。

p.51
バンシー banshee
 アイルランドの死の妖精。偉い人や徳の高い人の死を告げて、泣き叫ぶといわれている。

p.53
ドラク Drac
 水にすむ目に見えない女の精霊(本書では怪物)。にせものの宝石で人を水中におびきよせて食べる。

p.57
水辺の洗濯女 Washer-at-the-Ford
 ベン・ニーア(bean nighte:ゲール語で「洗う女」の意味)の一種。スコットランド高地地方とアイルランドの伝承の中に現れ、その呼び名と性格は土地によって違う。人里離れた小川のほとりで、死期が迫っている人の血に染まった衣服を洗う。小柄で、緑の服を着、水かきのついた赤い足をしている。ベン・ニーアが現れるのは悪いことの前兆。

p.58
コラニエード coranieid
 人の話をなんでもきいてしまうというケルトの精霊。

p.60
アッシパトル Assipattle
 スコットランド伝説の主人公。なまけ者で兄弟たちからばかにされていたが、運命の導きでドラゴンを退治し、美しい王女を救う。

p.62
ボゲードン bugganes
 マン島で水に棲むといわれる有害なゴブリン。馬や牛のような姿をしているが、人間に姿を変えて子どもをさらうなどの悪さをする。

バーゲスト barguest
 イングランド北部の犬の姿をした怪物。火のような巨大な目を持ち、もじゃもじゃの毛をしている。バーゲストが現れるのは死の前兆といわれている。

ピクトリー・ブラッグ Pictree Brag
 いたずらをこのみ、変身を得意とするゴブリンのひとつ。馬に変身する場合が多い。

トリトン triton
 海の精霊で、上半身が人間で下半身は魚の姿をしている。

ウシュタ ushtey
 カーヴァル・ウシュタのこと。マン島で水にすむといわれる馬。人間や家畜を水中にひきずりこむ。

小麦畑の鬼婆 Corn wives
 ヴェンド族(もとドイツ北東部に住んでいたスラヴ民族)に伝わる伝説の鬼婆。出会ってしまったときに、鬼婆のいうことを全て否定するか、祈りの言葉をさかさからいいつづけることができれば、無事でいられる。

p.63
ナックラヴィー nuckelavee
 スコットランドの怪物。ふだんは海にすむが、たびたび陸地に上がって作物をからしたり家畜や人間を殺す。皮膚がなく、グロテスクな見た目をしている。

ブーブリー boobrie
 スコットランドの巨大な水鳥。耳障りで大きな声で鳴き、羊などの家畜をむさぼり食う。

赤帽子 redcap
 スコットランドの邪悪なゴブリン。もともと赤い帽子をかぶっているが、それをさらに人間の血で染めることを好む。

メロー merrow
 アイルランドの人魚。女のメローは美しいが、男のメローは醜い。

コボルド cobbold
 ドイツの民話に登場するいたずら好きの精霊。家につくコボルドは食べ物を用意してやれば家の雑用などを手伝ってくれるが、鉱山のコボルドは事故や落盤を起こすなど邪悪なことが多い。

p.64
玄関のドアに魔除けの鉄 a piece of iron put up on a door
 鉄は妖精や悪い魔法を防ぐ力があるとされる。

p.78
真昼のひねり屋 Noonday Twister
 ロシアの妖怪、ポルードニツァ(Psezpolnica:「真昼の女」の意味)のことと思われる。真昼に現れ、ライ麦畑に住む。人間の首をつかんでひねったり、大鎌で切りつけたりする。白い服を着て、背の高い美しい娘の姿をしている。

p.90
オデュッセウスとセイレーン Odysseus and the Sirens
 オデュッセウスはギリシア神話の英雄。トロイア戦争の名将でもある。セイレーンはギリシア神話の海の精霊で、美しい歌声で船乗りを誘惑し、船を難破させる。オデュッセウスはトロイア戦争からの帰路、海でセイレーンにあったが、誘惑する歌声に負けないよう、船のこぎ手たちの耳をロウでふさぎ、自分の体をマストに縛りつけた。

p.112
ガブリエルの猟犬群 Gabriel Hounds
 空を飛ぶ、人間の頭を持った妖怪犬の群れ。特定の家の上を旋回するときは、その家の住人の死か不幸を予兆している。

p.119
オビー・オース the Obby Oss
 イギリス・コーンウォール地方の伝統行事、五月祭のときに楽隊やダンサーたちと一緒にパレードをする馬の道化(本書ではモンスター)。とがった紙の黒い円錐帽にグロテスクな面をつけ、大きな丸い枠の入った黒い布のスカートを肩からかけている。踊りながら沿道の人々にちょっかいを出す。

p.122
グラシュティグ the Glaistig
 半分女性、半分ヤギの姿をした水の精。人に危害を加えることもあれば、家事を引き受けたりすることもある。

ポーチュン Portune
 小さな農耕妖精。日中は農場で働き、夜になって戸締まりがすむと火を起こし、懐からカエルを取り出し、石炭の火でそれを焼いて食べる。

死番虫 death-watch beetle
 コナチャタテともいう。木をくって穴をあけるときにカチカチという音をたてる。その音は死の前兆と信じられ、死番虫といわれるようになった。

p.123
「おれ、フランス人を追っ払って……」
 コーンウォール地方には、14世紀にフランスの軍艦がパレードするオビー・オースたちの姿を目にし、そのやかましい音をきいて、悪魔が軍隊を引きつれて踊りながら行進しているのだと思い、逃げ出したという伝説が残っている。

「子のないおなごに赤んぼをさずけてやった」
 パレードのとき、オースにちょっかいを出された若い女性は翌年結婚するか妊娠するといわれている。

ミノタウロス the Minotaur
 ギリシア神話の人身牛頭の怪物。クレタ島の王ミノスが迷宮に閉じこめ、毎年子どもたちを食べさせていた。のちに英雄テセウスが退治する。

テセウス Theseus
 ギリシア神話に登場する英雄。ミノタウロスをたおす。

p.124
ファータ・パドウリー the Fata Padourii
 ルーマニアの女の木の精。アイルランドの女の死の妖精バンシーに似ている。夜に泣きさけんで、人の死を告げる。

p.132
大きなヒキガエル gross toad
 サムヒギン・ア・ドゥール(Llamhigyn Y Dwr:「水をはね渡るもの」の意味)をさしていると思われる。ウェールズの水棲魔。脚がなく、羽根と尻尾がある巨大なヒキガエルに似た姿で、漁師の釣り糸を断ち切り、川に落ちた羊や漁師をむさぼり食う。

p.134
マーリン Merlin
 アーサー王伝説の魔法使いの予言者。

p.146
ハイ・ブラジル Hy Brasil
 大西洋にあると考えられた楽園の島。大王ブラーサルのすみかとされている。7年に一度姿をみせるといわれ、その島をみた者は必ず死ぬと伝えらえた。

〈どっちつかずの者〉〈隠された者〉〈イヴの子ども〉
The Undecide. The Hidden People, the Children of Eve
 妖精の起源の一説による。イヴは子どもを多く作りすぎたために、あわてて一部を神の目にふれぬようかくした。それを知った神は激怒して、イヴへの罰に、かくした子どもたちを人々の目にうつらないようにしてしまった。その子どもたちが妖精であるとする説がある。また、妖精は地獄に堕ちるにはあまりにも善良で、天国に入るにはあまりにも悪いもの、あるいは、人間と霊魂の中間に位置する存在と信じられていた。

p.155
エールキング Erlking
 原文では Erl-eye。ドイツの伝説にあらわれる妖精王、エールキングをさすと思われる。エールキングはあごひげを生やし、黄金の冠をかぶった巨人で、子どもを死の国に誘う。朝が「早い」を意味する early の発音を連想させる言葉でもある。

p.216
金貨の壷 a pot of gold
 小さな妖精のくつ屋レプラコーンをつかまえて脅すと、金貨の壷のかくし場所を教えてもらえるという、アイルランドの言い伝え。

三つの願い three wishes
 けちな百姓夫婦が貧しい乞食に宿を貸したほうびに、神さまから三つの願いをかなえてもらえることになるが、ふたりはけんかをして願いを三つともむだにしてしまう。

p.220
ミシェル・ド・ガリス Michelle de Garis
 ガーンジー島には、ミシェルという美しい女がイングランドの若い妖精と恋に落ち、妖精についてイングランドにいった伝説がある。

p.260
ハシバミ hazel
 カバノキ科の落葉樹。ケルト文化でもっとも神聖視されている木のひとつであり、魔法や悪運から身を守るとされている。

魔女のびん witch-bottles
 伝統的な魔除けのひとつ。びんに曲げたくぎや針を9本に髪の毛など入れて、戸棚の中にいれたり玄関前に埋めたりする。

ミソサザイ wren
 スズメ目ミソサザイ科の非常に小さい鳥。ケルトでは「鳥の王様」といわれ、もっとも生け贄にふさわしい鳥とされている。マン島では、12月26日聖ステパノの祝日に、島の少年たちが、大声を出してやぶかを棒でたたきながらミソサザイを追って捕まえて殺し、各家を回り、羽と引きかえに祝儀をもらう。ミソサザイの羽は幸運をもたらし、魔除けになるとされている。

「建物の出入り口や窓の上の横木に血を塗る」
 旧約聖書『出エジプト記』12章第21節~第23節の記述によると思われる。

蹄鉄 iron horseshoes
 戸口の上に逆U字形にかけてある蹄鉄は、妖精と魔女の侵入をふせぎ、妖精除けになった。

p.305
ブラッグ brag
 変身を得意とするゴブリン。馬に変身する場合が多い。

カリーグレイハウンド calygreyhound
 レイヨウの体に、前脚にタカの爪、後ろ脚に雄牛のひづめを持つ怪物。

バグウィ bagwyn
 レイヨウに似ているが、毛でふさふさの尾をしており、長く曲がった角を持っている想像上の動物。

グリフィン griffin
 ギリシャ神話の怪獣。頭部前足はワシで翼を持ち、胴体後足はライオンの姿をしている。

【歌】

p.30
そこの子そこの子、どこへいく?~
 『マザー・グース』の替え歌。もとの歌は以下のとおり。
“Where are you going to, my pretty maid?”
“I’m going a-milking, Sir,” she said,
“Sir,” she said, “Sir,” she said,
“I’m going a-milking, Sir,” she said.

p.30、p.33
おお、勇ましきヨーク公~
 『マザー・グース』の替え歌。もとの歌は以下のとおり。
Oh, the brave old Duke of York,
He had ten thousand men;
He marched them up to the top of the hill,
And he marched them down again.
And when they were up, they were up,
Ane when they were down, they were down,
And when they were only half-way up,
They were neither up nor down.

p.32
ジャックとジルは丘にのぼった~
 『マザー・グース』の替え歌。もとの歌は以下のとおり。
Jack and Jill went up the hill
To fetch a pail of water;
Jack fell down and broke his crown,
And Jill came tumbling after.

p.33
やっほれ、ギーコギーコ~
 『マザー・グース』の替え歌。もとの歌は以下のとおり。
Hey diddle diddle,
THe cat and the fiddle,
The cow jumped over the moon;
The little dog laughed
To see such sport,
And the dish ran away with the spoon.

p.65
……わたしと結婚してください~
‘O Soldier Won’t You Marry Me’という古いイギリス民謡の一部の替え歌。もとの歌は下記の通り。
O soldier, soldier, won’t you marry me
With your musket fife and drum?
O no sweet maid I cannot marry you
For I have no coat to put on.

p.90、p.91
希望と栄光の国、自由の母~
 「希望と栄光の国」(サー・エドワード・エルガー作曲/アーサー・クリストファー・ベンソン詞)の替え歌。もとの歌(一部)は以下のとおり。
Land of Hope and Glory, Mother of the Free,
How shall we extol thee, who are born of thee?
Wider still and wider shall thy bounds be set;
God, who made thee mighty, make thee mightier yet.

p.159
われらの船は煙まみれ~
p.194
われらの船はオークの荷馬車~
p.239
われらの船は石炭まみれ~
 いずれもアメリカ民謡 “Heart of Oak” の一部の替え歌。もとの歌(一部)は以下のとおり。
Heart of oak are our ships, heart of oak are our men;
We always are ready, steady, boy, steady!

p.163
小さなアヒルがみんなで鳴いた~

 童謡 “Five Little Ducks”(*1)の一部と “The Fox Went Out on a Chilly Night”(*2)の一部が混ざっていると思われる。
(*1)
Five little ducks
Went out one day
Over the hill and far away
Mother duck said
“Quack, quack, quack, quack.”
But only four little ducks came back.
(*2)
Then the fox and his wife without any strife,
Cut up the goose with a fork and knife.
They never had such a supper in their life,
And the little ones chewed on the bones-o!
Bones-o! bones-o!

p.211
月の男 さっさと月からおりてきて~
 『マザー・グース』の替え歌。もとの歌は以下のとおり。
The man in the moon
Came down too soon,
And asked his way to Norwich;

p.212、p.223
リトル・ボーイ・フェイ~
 『マザー・グース』の替え歌。もとの歌は以下のとおり。
Little Bo-peep has lost her sheep,
And can’t tell where to find them;
Leave them alone, and they’lol come home,
And bring their tails behind them.

p.231
弱虫べろべろばあ~
 『マザー・グース』の替え歌。もとの歌は以下のとおり。
Bye, baby bunting,
Daddy’s gone a-hunting
Gone to get a rabbit skin
To wrap the baby bunting in.

耳をすませろ 耳をすませろ~
 『マザー・グース』の替え歌。もとの歌は以下のとおり。
Hark, Hark
The dogs do bark,
The begger are coming to town;
Some in rags,
And some in jags,
And one in a velvet gown.

p.234
猟師は我が家へ、海から帰り~
 ロバート・ルイス・スティーブンソン “Requiem” の一部を変えている。もとの文は以下のとおり。
“Here he lies where he longed to be;
Home is the sailor, home from sea,
And the hunter home from the hill.”

p.246
「夏は来たりぬ」~
 1250年ころにできた歌で、最古の六声曲としてよく知られている。歌詞は以下の通り。
高音部
Summer is icumen in : Ihude sing, cuccu!
Groweth sed and bloweth med and spruingth the
wede nu, Sing cuccu!
Awe bleteth after lomb, Ihouth after calve cu ;
bulluc sterteth, buck verteth : murye sint cuccu!
Cuccu, cuccu!
Wel thy singest, cuccu ; ne swik thu naver nu.
低音部
Sing, cuccu, nu! Sing, cuccu!
Sing, cuccu! Sing, cuccu, nu!

p.252、p.253
集まれ、集まれ、みんな集まれ~
 コーンウォール州パドストウで行われる五月祭「パドストウ・オビー・オース」の朝に歌われる歌。
Unite and unite and let us all unite,
for Summer is a comin’ in today
And whither we go we will all unite,
in the merry morning of May.

Rise up, Mr. _______ know you well and fine,
for summer is a-come unto day.
You have a shilling in your purse and I wish it was in mine
In the merry morning of may.

p.282
やせたあいつは戦士~
 ”Boney Was A Warrior” という歌の一部の替え歌。Boneyはナポレオン・ボナパルトを指すといわれている。もとの歌は以下のとおり。
Boney was a warrior
Away, a-yah!
A warrior and a terrier
Jean Francois!

p.325
リトル・ボーイ・グリーン 角笛を吹く~
 『マザー・グース』の替え歌。もとの歌は以下のとおり。
Little Bo-peep has lost her sheep,
And can’t tell where to find them;
Leave them alone, and they’lol come home,
And bring their tails behind them.

【戦争・武器】

p.58
マスケット銃 musket
 ライフル銃が主流となる1850年代まで主に使われていた単発式軍用銃。火打ち石式で点火する。

三十ポンド砲 thirty-pounder
 大砲の一種。30ポンドは、砲弾の重さを指す。

p.59
「フランスのことをいってるの? この前の戦争のこと?」
 第一次世界大戦では、「マルヌの会戦」(1914年)、「ヴェルダン要塞攻防戦」(1916年)、「ソンムの会戦」(1916年)の3度、フランスの国土で大規模な戦闘が行われている。いずれも長期に渡る銃砲撃戦、塹壕の破壊を目的とした大量の火薬の使用、史上初の戦車の導入など、軍事史に残る激しい戦いだった。

p.69
世界大戦ではそれだけたくさんの命がうばわれた。
 第一次世界大戦のこと。イギリスで第一次世界大戦に出兵してほとんどが戦死した世代をさして「失われた世代(Lost Generation)」という。

p.115
トロイの木馬 the wooden horse of Troy
 ギリシア対トロイのトロイ戦争で、ギリシア軍がトロイの陣地の外に巨大な木馬をおいてとつぜん撤退した。トロイ軍が木馬を陣地内に入れると、その晩、木馬の中からギリシア軍の兵士が出てきて、トロイ軍を全滅させた。

p.126
ワーテルローの戦い waterloo
 1815年6月に起きた、イギリス・プロセイン・オランダ連合軍と、ナポレオン率いるフランス軍との戦い。

方陣 form line
 一辺に歩兵3列ずつを外向きに並べ四角を作る陣形。正面も側面も背面もすべて同じように固めることができるため、騎兵の攻撃を防ぐには極めて有効だった。実際のワーテルローの戦いで、英国のウェリントン将軍がフランス騎兵隊に対して用いた戦法である。

p.222
クリミア戦争 the Crimean War
 1853~56年。イェルサレム聖地管理権をロシアが要求してトルコと開戦。その後、イギリス、フランスもトルコ側に立って参戦。ロシアが敗れた。

南ア戦争 the BoerWar
 1899~1902年。トランスヴァール・オレンジ両国に対するイギリスの帝国主義侵略戦争。少数で非力のブーア人はよく抵抗したが、イギリスの残虐な戦闘のもと、ついに屈服した。

【祭り】

p.184
わしが母にもっていっていたのはみやげのおやつ。
 ランカシャー州からデヴォン州に至る地域では、四旬節の第4日曜日は母親訪問日と呼ばれ、「子どもたちはみな親元にもどり、そろってご馳走を食べる」という母親訪問の行事が行われている。里帰りの主な目的は、母親にお金や小さな飾り物や、なにかおいしい食べ物を持っていくこと。シムネルケーキが有名。

p.246
モリスダンス morris dance
 古い英国の男子の仮装舞踏の一種。くるぶし飾りや腕輪などにつけた鈴で音楽に合わせて拍子をとって踊る。主に五月祭の催し物。

p.247
月桂樹のかんむりや、緑色のクレープペーパーで作ったにせの葉っぱの外套
 イングランド南部地方では、特に煙突掃除夫たちによって、ジャック・イン・ザ・グリーン(’Jack-in-the-Green’)という、青葉や小枝で囲まれたピラミッド形の屋台の中に仲間をひとり入れ、中でおどりをおどらせる遊戯がおこなわれる。本文ではそのときの衣装を指していると思われる。

p.248
わしらのために最後の一束を刈ってほしいんだ
 最後に刈り取った麦を大事に扱う習わしは、イギリス国内に多く残っており、麦束に麦の精(Corn Spirit)が宿っていると信じていた異教徒の信仰の名残と思われる。この慣習はふつう、全員が鎌を投げて最後の麦束を刈り取るというもので、これは、麦束に宿る麦の精を「殺すこと」によって、下手人自身にふりかかる恐ろしい悪運を刈り入れ人全員に分散させたり、あるいは、それを回避するための方法として始められたものだといわれている。

p.254
チーズ転がし cheese rolling
 グロスター州ブロックワースのクーパーズ・ヒルで春に行われる行事。参加者が合図とともに、丘からいっせいに円盤形のチーズを転がし、チーズを追ってすべりおりたり転がったりしながら下のゴールを目指す。

ドルイド druid
 古代のケルト人の信仰をつかさどっていた聖職者。ケルト人は霊魂の不滅を信じ、動植物の姿をとる神々を崇拝していた。ドルイドを中心とした宗教は一時衰退したが、18世紀終わりにまた関心が高まり、芸術祭の形で風習が残った。中でも全ウェイルズ芸術祭は有名で、ドルイドの儀式に従って、詩の競技が行われる。

p.261
スペイン人が雄牛を通りにはなす祭り
 スペイン、パンプローナに伝わるスペイン三大祭りのひとつ、サンフェルミン祭を指す。別名「牛追い祭」といい、市内に闘牛が放たれ、男たちはできるだけ牛に近づくことを競う。

p.266
〈かがり火〉の祭り The Burning of the Bush
 バークシャー州ハンガーフォードで復活祭の後、第2火曜日に行われるホック祝節(Hocktide)を重ねていると思われる。ハンガーフォードではこの日、昔実際に行われていた、町の役人を選出する荘園裁判所の開廷のまねごとをする。法廷で決められる役職のひとつに4人の「十人組頭」(’Tutti Men’)があり、彼らはこの行事のあいだに町内の警備の仕事もする。その報酬として、各家の所有者から人頭税と、出会う女性の誰からもキスを取り立てることができる。その二種類の税の徴収の際には、先端に花束をしばりつけ、リボンで飾った「職杖」 ‘tutti poles’ をたずさえている。

 イギリス、スコットランドでは、さまざまな火祭りが行われる。以下、本章の祭りに一部似ている祭りをふたつ紹介する。

 ・スコットランドのモレイシャー州バーグヘッドのクレイヴィ祭り(1月11日)
  クレイヴィと呼ばれるかがり火籠を担ぎ手が頭と肩に載せて港に向かって駆け出していき、その後には大勢の見物人が歓声を上げて続く。万一よろめいたり倒れたりするようなことがあれば、新しい年に本人はもちろん、村中に厄災がかかると恐れられており、担ぎ手は一定の間隔を置いて交代する。その間、燃えさしを取り出して道路沿いの玄関の中に投げ入れたり、見物人の一部に配る。この燃えさしを手に入れた者は1年間幸運に恵まれ、悪霊から守られると信じられている。
 ・スコットランドのパースシャー州コムリーの旧年送りの火祭り(12月31日)
  村人たちが6フィートの竿の先に縛り付けてあるたいまつに火をつけ、バグパイプの吹奏者を先頭に、仮装者たちがたいまつをかついで村中を練り歩く。村をひとまわりしたのち、広場にもどり、担いでいるたいまつを広場高くに積み上げられた薪の山に投げ入れる。そして広場に集まっている村人たちといっしょになり、かがり火の火が燃え尽きるまで踊りつづける。

【その他】

p.80
額にしるし a mark on your forehead
 旧約聖書「創世記」第4章にあるカインとアベルの物語による。神に受け入れられた弟アベルを憎んで殺したカインは、神によってしるしをつけられた。このしるしは悪の象徴ではなく、神の慈悲と保護を表す。

p.87
緑の丘の斜面に白亜の地面が、一筆書きの白い線のようにもようをえがいている。大きな馬の形だ。

 イングランド南部のイーストアングリア地方からバークシャーにかけては、白亜紀(約1億3500万年前から約6500万年前)の地層である白い石灰岩質(チョーク)の地面がみられる。バークシャーの緑の丘陵地帯にには、その白い土を露出させて描いた巨大な白馬の地上絵がいくつもある。

p.134
「オオカミが羊の群れん中にやってきたんだ。ぬすんだ羊の毛皮を着てな。すると……」

 「イソップ物語」の「羊の皮をかぶったオオカミ」を語っていると思われる。獲物を楽して捕らえようと、羊の皮をかぶって群れにしのびこんだオオカミが、羊飼いに食肉用に殺されてしまうという話。

参考文献、ウェブサイト

『リーダーズ』研究社
『リーダーズ・プラス』 研究社
『妖精事典』キャサリン・ブリッグズ編著/平野敬一、井村君江、三宅忠明、吉田新一共訳/冨山房
『広辞苑』岩波書店
『ジーニアス英和辞典』大修館書店
『世界大百科事典』平凡社
『山川世界史総合図録』 山川出版社
『ケルトの白馬』ローズマリー・サトクリフ作/灰島かり訳/ほるぷ出版
『日本語大辞典』講談社
『ランダムハウス英和大辞典』小学館
『世界史B用語集』山川出版社
『ジーニアス英和辞典』大修館書店
『イギリス祭事・民俗事典』チャールズ・カイトリー著/渋谷勉訳/大修館書店
『アイルランドの民話と伝説』三宅忠明著/大修館書店
『ふたりの巨人 アイルランドのむかしばなし』エドナ・オブライエン再話/マイケル・フォアマン絵/むろの会訳/新読書社)
『島めぐり イギリスのむかしばなし』アイリーン・コルウェル再話/アンソニー・コルバート絵/むろの会訳/新読書社)
『ケルトの歴史 文化・美術・神話をよむ』鶴岡真弓、松村一男著/河出書房新社
『ケルトの木の知恵――神秘、魔法、癒し』ジェーン・ギフォード文・写真/井村君江監訳/倉嶋雅人訳/東京書籍
『ケルト妖精民話集』J・ジェイコブス変 小辻梅子訳編 社会思想社 現代教養文庫
『ケルト魔法民話集』 小辻梅子訳編 社会思想社 現代教養文庫 (「辻」のしんにょうはふたつ点)

The Encyclopedia Mythica 
isleofman.com 
celt.net 
The Societe Jersiaise 
第一次大戦 
University of Rochester Libraries 
大砲と装甲の研究 
The Long, Long Trail
MUSICA
湘南通信 
エドワード・エルガー/希望と栄光の国 
Cornwall by Cornishlight 
Cyberwitch 
戦術の世界史 
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Classic Literature Library 
Fairgrove Conjureworks 
ウィキペディア 
Everything under the Moon
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Napoleon Guide 
Heraldic Monsters